私は旅の行き先が決まったら、まずその国のベストセラー小説を読むようにしています。
なぜならその国の小説を読むと文化、生活、ユーモア、気質までを知ることができ、どの観光本よりも実はその国を知ることができるからです。
そしてなにより旅行へ向けて気分が盛り上がります
時には小説に出てくる場所に実際行ってみたりして、さらに旅を楽しむこともできます!
今回は、台湾旅行前に読みたい台湾小説3作品をご紹介します。
もちろん旅行前じゃなくてもおススメ!
持参して現地で読むと、まるで小説の中に迷い込んだ不思議な感覚を楽しめるし、
帰国後読むと旅の余韻にどっぷり浸れます。
旅行に行けない時も本を読んだだけで、心が台湾にバーチャル・トリップできます。
つまりはいつでも楽しめる
台湾旅行が味わい深くなる小説の世界をぜひお楽しみください。
台北プライベートアイ / 紀 蔚然
作品紹介
- 7カ国語に翻訳されたベストセラー
- 第13回(2022年)「翻訳ミステリー大賞」受賞
- 2022年このミステリーがすごい(海外)5位
- デビュー作にて台湾ハードボイルド探偵小説の金字塔となる
あらすじ
主人公 呉誠(ウー・チェン)は、台湾大学の教授で、劇作家としても名声を築いていたが、突如その全てを捨てて、私立探偵になることにした。
台北の有名な心霊スポット「辛亥トンネル」。その裏の臥龍街で主人公 ウー・チェンは、ひねくれた哲学と卑屈ながらたくましい開き直りで、探偵という新しいステージのスタートを切った。
脇をかざる登場人物達も個性豊かで、自転車修理工場の阿鑫、警察官 小胖、タクシー運転手の王添来など、まるで桃太郎が犬、キジ、猿をお供していくように仲間になっていく。
そして仲間が出揃ったところで物語は不吉な連続殺人事件へと繋がっていく。
一匹狼だったウー・チェンは仲間という守るべきものができ、そして失うことになるのだった。
感想
台湾(台湾人)を皮肉りながら綴られる物語は秀逸。
爆笑しながら、台湾人の大らかな気質が愛おしく、より台湾が好きになった。
パニック障害と鬱に悩まされる主人公だが、真面目に語る哲学はユーモアにあふれ、抱える病気に反して底抜けな明るさが小説全体を包んでいる。
ミステリー展開も本格的。
読みながら、私も主人公ウー・チェンと一緒に台北の街を縦横無尽に行き来し、目の前に台湾が広がるようだった。
地図を広げながら読みたい、台湾好きにはたまらないミステリー。
僕が殺した人と僕を殺した人 / 東山 彰良
作品紹介
第34回織田作之助賞受賞(2017)
第69回読売文学賞受賞、第3回渡辺淳一文学賞受賞(2018)
作品
2015年アメリカ デトロイト。少年ばかりを狙った連続殺人犯サックマンが捕まった。
そこに一人の弁護士が接見に行く。
そして突如、舞台は30年前の1984年の台湾に移る。
優等生のユン、デブっちょのアガン、喧嘩の強いジェイ。
それぞれ幸せとは言えない家庭環境の中、互いの悩みを理解しあい、 時には激しい喧嘩もし、彼らは彼らの世界の中で精いっぱい生きていた。
少年から大人へと移り変わる時期。向こう見ずで、正義感にあふれ、夢中なものを見つけ、ただ3人でいれば楽しかった日々。しかしそれがだんだんと様相を変えていく。
家庭環境が彼らのささやかな幸せを壊していく。
そして彼らの正義感、固い友情は、ある殺人計画へと進んでいくことになる。
突き進んでいった先には、大きな闇が口を開けて3人を待っていた。
一時、苦しみも悲しみも、喜びも分かち合った彼ら。
30年後、一人はサックマンという殺人犯になり、一人は弁護士という形で 再会を果たす。
感想
台北の喧騒、湿気を含んだ空気、牛肉麺の湯気、ガジュマルの草いきれ。
感覚を刺激する描写は一瞬で80年代の台北の街角に連れて行ってくれた。
疾走感ある文章は少年のエネルギーに呼応するようだ。
前半の友情を築いていく少年たちの明るさと、後半ボタンの掛け違えのように取返しがつかなくなっていく展開は、読んでいて胸が苦しくなった。
時折フラッシュバックのように入る連続殺人犯と弁護士の場面。
少年3人のうち一体だれが殺人犯なのか最後まで予想がつかない。
少年から大人になる時の危うさと揺らぎをとらえた作品で、自分にもかつて持っていた何かを思い出しそうになる。
小説の舞台は観光で人気の龍山寺、迪化街。
あの頃の3人の少年が居るみたいで、訪れたくなる。
哀しい青春ミステリー小説。
歩道橋の魔術師 / 呉明益
作品紹介
- 2012年台北国際ブックフェアの小説部門で大賞
- 2020年 台湾にてコミック化
- 2021年 台湾にてテレビドラマ化
- 2023年日本の教科書(明治書院)に採用される。日本の教科書に載った初の台湾文学作品。
あらすじ
かつて台北に実在した中華商場という住居兼商業施設が舞台。
それは台北駅から西門町まで1キロに及ぶ建物で、8棟が歩道橋で結ばれていた。
歩道橋にはたくさんの物売りがいて、その中で異質の存在だったマジシャン。
中華商場に住む子供たちは彼のマジックに夢中になり、そして幻想的、魔術的な世界に足を踏み入れることになる。
大人になって思い出す子供時代。
あの「歩道橋の魔術師」との出会いが、その後の人生に大きな影を落としている。
「歩道橋の魔術師」の記憶が交差する10編のオムニバス小説。
感想
そういえば昔、小学校の校門の前で、踊る人形を売ってたおじさんがいた。
生きているように動くその人形が欲しくてたまらなかった。
子供のころ、学校とか病院とかの死角が怖かった。
片目をつぶって通り過ぎた。
そんなことを思い出させてくれる小説だった。
子供のころの感受性は現実と幻想を行き来し、浮遊している。
未来も感情も定まらない不安定さ。
それを「魔術師」というメタファーで、丁重に表現している上質な小説だった。
「僕が殺した人と僕を殺した人」は子供のころの無垢さと葛藤を思い出させる小説だったが、 こちらは子供時代特有の感覚を思い出させる小説だった。
(続)台湾 おすすめ小説
今回、台湾が舞台の小説3冊をご紹介しました。
このブログを書くために読み返したら、今すぐ台湾に行きたくなってしまいました。
この作家さんたちの他の小説も面白そうなので、読みたいと思っています。
- 台北プライベートアイの続編
2.東山 彰良 直木賞受賞作品
3.呉明益の長編小説
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。